ファッション生産の危機 起業家のチャンスは?
だが、こうした縫製工場は、先の調査結果からも明らかのように少ない。賃加工が続き、注文先の言うままに流され、しかも給料が安く、職場の環境が劣悪……という環境では、いくら“右脳型募集”をかけたところで、若い人材からは敬遠されてしまう。
そこでアパレル工連では職能基準の開発だけでなく、職場環境の改善にも力を入れているが、これらの条件を含めて縫製業を取り巻く状況が良くなったとしても、どれだけ若い人材を呼び込めるか……。やはり、そうした疑問は残る。
ファッションビジネスは既成概念を破壊して、新しいコンセプトを構築する。それの繰り返しで進化してきた。カテゴリーやコンセプトがスクラップ&ビルドされ、そこから新しいエネルギーが沸きだしてくる。
例えば最近、「ウラ原宿」が注目されるのも、既存のアパレル企業にはない、素人っぽさが“新しい価値”を生み出し、それが市場創造につながっている。もし、ファッションビジネスに規制がはたらき、新規参入を拒む状況ができたとしたら、これは不幸なことである。
そのことは縫製業界にも当てはまる。賃加工という既成概念を打ち崩し、業界のプロには信じがたい発想で、新たな方法を生んでいく。そんなシステムが残念ながら縫製業界にはない。そして、さらなる刷新を望むのは“協業化”という考え方である。
これも周知のことだが、日本のアパレル縫製業は零細である。工業統計によれば従業員規模が10人未満の事業所が73%を占め、100人以上の事業所は2%にも満たない。それだけに縫製業の結束が不可欠になるが、この結束力が弱い。全国各地に同業組合は数多くありながら、これが一本化されていない。全国組織が脆弱なため、縫製業の交流もかぎられ、近代化の施策も“地域完結型”になっている。
一方、若きクリエーターたちがチャンスをもらって才能を伸ばすように、新・職人を発掘し、彼らが羽ばたいていけるようなインキュベーションを、縫製業でもつくってほしい。独り立ちしたばかりのデザイナーと手を組んで、一緒になって新しいファッションを創出する。デザイナーだけでなく、新しいショップと組んだっていい。
もちろん、アパレル企業やショップに比べれば、工場の開設には資金もかかるし、それなりの技術力が求められる。「そんな簡単にできれば、私たちは苦労していない」との反発もあるかもしれない。だが、ファッションへの情熱もかけがえのない資産であり、そうした情熱を製造業にも向ける。そんな環境づくりが必要である。
そうしたインディーズが手を組んで“創・工・商”を構築すれば、まったく新しい生産システムだって実現するかもしれない。ファッションビジネスは「ワクワク」と「ドギドキ」の世界だと言われる。そんな環境を縫製業がどのようにつくっていくか。これも21世紀に向けての課題といえる。


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