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2008/02/25

メンズファッションのいがい

2008/02/22

ファッション生産の危機  起業家のチャンスは? 

 だが、こうした縫製工場は、先の調査結果からも明らかのように少ない。賃加工が続き、注文先の言うままに流され、しかも給料が安く、職場の環境が劣悪……という環境では、いくら“右脳型募集”をかけたところで、若い人材からは敬遠されてしまう。
 そこでアパレル工連では職能基準の開発だけでなく、職場環境の改善にも力を入れているが、これらの条件を含めて縫製業を取り巻く状況が良くなったとしても、どれだけ若い人材を呼び込めるか……。やはり、そうした疑問は残る。
 ファッションビジネスは既成概念を破壊して、新しいコンセプトを構築する。それの繰り返しで進化してきた。カテゴリーやコンセプトがスクラップ&ビルドされ、そこから新しいエネルギーが沸きだしてくる。
 例えば最近、「ウラ原宿」が注目されるのも、既存のアパレル企業にはない、素人っぽさが“新しい価値”を生み出し、それが市場創造につながっている。もし、ファッションビジネスに規制がはたらき、新規参入を拒む状況ができたとしたら、これは不幸なことである。
 そのことは縫製業界にも当てはまる。賃加工という既成概念を打ち崩し、業界のプロには信じがたい発想で、新たな方法を生んでいく。そんなシステムが残念ながら縫製業界にはない。そして、さらなる刷新を望むのは“協業化”という考え方である。
 これも周知のことだが、日本のアパレル縫製業は零細である。工業統計によれば従業員規模が10人未満の事業所が73%を占め、100人以上の事業所は2%にも満たない。それだけに縫製業の結束が不可欠になるが、この結束力が弱い。全国各地に同業組合は数多くありながら、これが一本化されていない。全国組織が脆弱なため、縫製業の交流もかぎられ、近代化の施策も“地域完結型”になっている。
 一方、若きクリエーターたちがチャンスをもらって才能を伸ばすように、新・職人を発掘し、彼らが羽ばたいていけるようなインキュベーションを、縫製業でもつくってほしい。独り立ちしたばかりのデザイナーと手を組んで、一緒になって新しいファッションを創出する。デザイナーだけでなく、新しいショップと組んだっていい。
 もちろん、アパレル企業やショップに比べれば、工場の開設には資金もかかるし、それなりの技術力が求められる。「そんな簡単にできれば、私たちは苦労していない」との反発もあるかもしれない。だが、ファッションへの情熱もかけがえのない資産であり、そうした情熱を製造業にも向ける。そんな環境づくりが必要である。
 そうしたインディーズが手を組んで“創・工・商”を構築すれば、まったく新しい生産システムだって実現するかもしれない。ファッションビジネスは「ワクワク」と「ドギドキ」の世界だと言われる。そんな環境を縫製業がどのようにつくっていくか。これも21世紀に向けての課題といえる。

2008/02/21

生産の危機   新職人を感じる縫製業

 
 聞くところによれば、右脳型人間が集積しているのは建築業で、それも大工と呼ばれる職種に顕著だという。家づくりの技術はもちろん、彼らが右脳型と呼ばれる所以は、自在な応用技術と創意工夫に優れているからだ、といわれる。どれだけ条件が変わっても、創意工夫によって、新たなアイデアを生み出し、独自の家をつくりあげる。
 それに近い“右脳”を感じたのは、かつて東北の縫製工場を訪れたときだった。縫製工場としては大きなクラスで、主にメンズのシャツを生産、そこで「工賃だけでは縫製技術は語れない」ことを実感した。
 一般的にドレスシャツの縫製工場は、いたるところに自動機器が並び、まるでロボット工場にいるような近代性を感じる。ポケットやカフスのパーツづくりは、すべて機械がやってしまう。人間はセットするだけで、あとは専用機がこなす。
 ところが訪れたシャツの工場は、最終工程にハンガー式のラインがあるだけで、その多くは“有人工程”である。勤続20年のキャリアをもつ技術者が、まるで精密機械のような細かい作業を行っている。そして、驚いたのが工程に流れる製品の多様性である。
 生地が薄いドレスシャツ工程の横では、肉厚のダンガリーシャツがつくられ、一度に何種類ものシャツが流れている。この多様な製品をこなすには、どんな状況にも対応できるベテラン・オペレーターが欠かせない。いってみれば職人が集まった工場。そんな感じがする。
 周知のようにシャツは精密性が要求されるアイテムである。ミリ単位の誤差が欠陥にあらわれる。それだけに縫製ロボットが欠かせない。しかし、精密性をクリアすればいいのか、といえば否である。多くのファッションがそうであるように、精密なシャツといえどもテイストが求められる。言い方を換えれば「シャツの味」ということになる。
 この味を出すには、デザインやパターンメークはもちろんだが、縫製仕様によっても味は千変万化する。その“味出し”ができるかどうか……。
 「当社では、まず欧米に負けない技術がある、と自負しています。問題は工賃で、しかるべき料金をいただければ何でもつくれる。ところが、現状は1枚1200円の攻防で、工賃は同じで『いいものをつくれ』ですから……」
 シャツ工場の社長は、なかばあきれ顔で、こう話していた。

2008/02/20

ファッション生産の危機   適正な技能評価の基準

 
 いわば「前門の虎、後門の狼」という“複合苦境”に立たされた縫製業界だが、それでも生き残りをかけた情熱は失せていない。同工連の調査によれば、事業拡大をはかる戦略要素として、イタリアにもあったように「企画機能をもち、取引先とのパートナーシップを構築する」という意見が64%にのぼり、自社ブランドの開発(33%)や海外に工場を出す(20%)、小売業を併設する(19%)……といった具合に、前向きな意見が少なくない。
 また、21世紀を見据えた縫製業を支える人材開発にも取り組み、新しい職能評価をつくりあげたことも、困窮をきわめる製造業に明るい話題を提供した。アパレル工連が欧米に視察団を送り込み、3年がかりで作成した「技能評価基準」がそれで、そのポイントは次の通りである。
 ■技能者は、それぞれの職場、それぞれの職種から培われた技能の持ち主であり、画一的な評価は公平さを欠く。
 ■分業構造の工業生産下では、必ずしも多くの分野の技術に精通していなくても目的は果たせる。このため専業化が進み、関連する必要な技術習得が減少傾向にある。
 ■技術者のもつ技能は特定技能に秀で、それ以外の技能には未熟、というのが一般的ある。
 ■今後求められる人材は、いかに「多能工」を育てていくか、が大きな視点となる。

 こうした考えに立ち、パターン製作、裁断・縫製準備、縫製、仕上げプレス、製品検査、生産管理など六つの基準がつくられた。そして、それぞれの基準には「初歩」「基礎」「一般」「優秀」のレベルが設けられ、誰もが公平に評価できる職能基準ができあがった。このプロジェクトの責任者は、次のように話している。
 「クリエーションが叫ばれる中、あらためてモノ作りが見直されている。アパレルでも新たな人材として『新・職人』が求められ、価値創造に取り組む右脳型人間の業界でもあるソーイング業界に若い力を呼び込みたい」

2008/02/15

ファッション生産の危機  イタリアでも厳しい賃加工

 アパレル製造業に関する状況は、先進国に共通した問題だともいえ、例えばイタリアでも下請企業(生産専門企業)は1990年代に入ってから、短納期、小ロット、品質要求がシビアになってきた、という。
 同じくアパレル工連がまとめた「海外雇用実態調査」によれば、熾烈になるファッションビジネスの国際競争のもとで、イタリアのアパレル産業が優位に立つには、下請企業といえども国際競争力が不可欠であり、そこでは次のような施策がとられている。
 ■注文先のアパレル企業とのパートナーシップに生き残りをかける
 ■商品企画力をつけてアパレル企業に飛躍する
 ■注文先のアパレル企業に商品企画でサポートする
 ■さまざまなサービスを便宜する
 そして、この「サービス」について同報告書は、イタリアの現状をつぎのように記している。
 「(下請企業の)サービスの質的向上については、ますます強化されている。新しいタイプとしては、企画にも参加し、生産の全工程を代行できる企業も生まれている。アパレル企業から簡単な素描画を与えられると、他の下請企業も活用して、すべてをまかなう。中には素材の提供、品質の検査まで下請企業が責任を持って行い、小売店に納品まで行う例もある……」
 イタリアと日本とでは業界構造が異なるが、どちらも下請企業が厳しい状況に置かれている点は同じである。その原因も製造コストの安い外国生産が増加し、短納期、小ロット、品質要求……といったぐあいに酷似した内容が多い。これを「注文先企業の締めつけ」とみるか、「これも国際競争の一つ」とみるか。イタリアでは下請企業も「国際競争力を強化することで生き残りをはかろう」という見方が多いようである

2008/02/08

ファッション生産の危機  「拡大をめざす」縫製業は2割

 ところで、日本アパレルソーイング工業組合連合会がまとめた「実態報告書」によると、日本の縫製業は取引形態で「賃加工のみ」という企業が72%に上る。これに「主に賃加工」(14%)を加えると、その数は86%に跳ね上がる。一方、これに対して「原料買い製品売り100%」という企業は4%にすぎず、「主に製品売り」の10%を足しても、全体の2割に満たない。
 この報告書による工場の平均年商は3億3000万円で、経営の方向性についても「現状を維持する」が58%に達し、「縮小をはかっていく」(11%)を足すと7割近くが“悲観派”ということになる。そうした一方「事業拡大を目指す」は23%でしかない。このあたりからも縫製業の疲弊ぶりが伺える。
 そこで縫製業を取り巻く経営環境について、あえて問題点をあげてもらうと、次のような意見が目立った。
 ■加工賃の引き下げ   95%
 ■採算性の悪化     92%
 ■生産性の低下     84%
 ■人件費の高騰     84%
 ■受注量の減少     80%
 ■従業員の高齢化    80%
 ■時短推進が困難    76%
 ■生産の小ロット化   75%
 ■人材育成の状況    70%
 どれもが一朝一夕には解決できない、深刻な問題である。こうした厳しさは人的資源にも影響を及ぼし、例えば新卒採用の状況をみると、過去5年間で「採用ゼロ」が56%に上っている。そして新卒採用の問題として、経営者は「他の業種に比べて賃金が安い」(61%)、「業界イメージが悪い」(47%)と訴えている。しかも、ここに「やや思う」を加えると、両者の数値は各々86%に跳ね上がる。

2008/02/07

ファッション生産の危機 国産の2倍を越える輸入品 

 日本にかぎらず先進国のアパレル産業にとって、生産の国外流出は避けられない問題である。欧米でも製造コストが安い開発途上国での生産が増え、アパレル製品の貿易収支は赤字となる国が多い。そうした状況からすれば、日本のアパレル輸入の入超現象に目くじらを立てることはないのかもしれない。だが問題は、そのバランスである。
 繊維産業構造改善事業協会(現・中小企業基盤整備機構)がまとめた「衣料品生産実態調査報告書」をもとに、アパレル製品の需給動向をみると、1988年は生産量が16億点で、輸入は13億点である。ここでは1.2倍(数量)も国内生産のほうが多かった。ところが、こうした状況は6年で逆転してしまい、94年には国内生産の13億点に対し、輸入が27億点。何と2倍もの大差が付いてしまった。これにともない国内消費に占める輸入品のシェアも、6年間で48%から68%に拡大した。
 一方、アパレル輸出は94年の実績で8400万点にすぎない。88年に1億8000万点もあったものが、わずか6年で半分以下になってしまったのである。94年の輸入が27億点だから、アパレル製品の貿易収支は32倍の入超ということになる。
 ちなみに財務省の貿易統計(2005年実績)では、アパレル輸入額が約2兆4700億円であるのに対し、アパレル輸出額は帽子などの雑貨含めても約540億円である。アパレル輸出額は年々低下し、輸出額は輸入額のわずか2%程度の水準に止まっている。

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